守護神カンダ・ウンパット



 「あなたの守護霊は、なんですか?」と聞かれたら、あなたはどう答えるだろう?
 オーストラリアの原住民アボリジニーのシャーマンに見てもらった友人で「君の守護霊はアルマジロだ」と言われた人がいる。喜んでよいのか悲しむべきか、困ったそうだ。
 たいてい守護霊は動物霊だと言われるが、先祖だったり、祖父、祖母だったりすることもあるようだ。
 バリでは、赤ん坊が生まれると、同時に眼に見えない4人『きょうだい』のが生まれると信じられている。男の子なら4人の兄弟、女の子なら4人の姉妹だ。
 その『きょうだい』はカンダ・ウンパットと呼ばれる。ウンパットは「4」で、カンダが「きょうだいや相手」の意味だ。
 カンダ・ウンパットは、常に本人の傍らにおり、死ぬまで寄り添うという。正しく扱われる限り、何かの時に助けてくれるといわれている。
 4人のきょうだいは、アンガパティ(angapati)、ムラジャパティ(mrajapati)、バナスパティ(banaspati)、バナスパティ・ラジャ(banaspati raja)と呼ばれる守護神だ。
 アンガパティは、水田のほとりにある祠の神。
 ムラジャパティは、山や森や木や道の神でダラム寺院の脇にあるサダの祠にあらわれる。サダはムラジャパティ寺院ともいわれる。
 バナスパティの棲み家はプセ寺院。
 バナスパティ・ラジャはダラム寺院に棲む。
 4人の『きょうだい』は、それぞれ、産後のへその緒(バリ語banah-インドネシア語tali pusat)、羊水(yeh nyom-air tubun)、胎盤(ari ari-tembuni)、血(getih-darah)に棲むといわれる。
 アンガパティはへその緒に、ムラジャパティは血に、バナスパティは胎盤に、バナスパティ・ラジャは羊水に棲むといわれている。
 産後、これらはニュー・ガディンと呼ばれる黄色いココナツの殻か、または、ふた付きの素焼きの壺に納められて、バレ・ダジョー(ムテンともいう)と呼ばれる家寺の横にある家長の寝室の前の土中に埋められる。
 男の子の場合は戸口を出て右側に、女の子の場合は戸口の左側に埋められる。埋めたあとには、大きな石をひとつ置き(竹で簡単な祭壇をつくる場合もある)、毎日欠かすことなく供物が供えられる。
 こんな言い伝えもある。
 人間が獣同然だった頃、シワ神は正しい行いを人間に示そうと4人の神々に頼んだ。イスワラ神、ブラマ神、マハデハ神、ウィスヌ神は命令を受けてシワ神と一緒に地上界にやってきた。しかし、四神はその意を忘れて四方に行ってしまった。赤子はシワ神で、四神はそれぞれへその緒と胎盤、羊水、血だ。土中に埋めるのは、シワ神のことを忘れないでと願ってのことだともいわれている。
 友人イダ・バグース君は、名前でわかるように高僧階層の子弟だ。お坊さんのカーストだけのことはあり、宗教心が篤い。
 彼は食事の時、食べる前に、料理の1部を皿の縁に分け、お祈りする。はじめは、彼の嫌いなネギをよけていると思っていた。しかし、よけたおかずは、ほんの少しづつですべての種類だった。
 不思議な行動の理由を訊いてみた。すると
 「カンダ・ウンパット(眼に見えない四人のきょうだい)に食事を分けているのだ」と答えた。
 友人イダ・バグース君は特別だと思う。ほかのバリ人に訊いてみたが、カンダ・ウンパットは知っているが、食事を分けることまではしていない。
 どちらにしても、バリ人は、守護霊カンダ・ウンパットに守られていることに変わりはない。いや、同じ人間なのだから、もしかして我々も・・・・?! 案外、そうかもしれない。



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